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筋トレ中、なんとなく息を止めていませんか?
実はそれ、効果を半減させ、怪我のリスクを高めているかもしれません。
「力を入れる時に吐く」と習ったけど、高重量だとキツイ…そんな悩みも少なくありません。
この記事では、最新の科学的知見に基づき、あなたの「目的」と「負荷」に合わせた最適な3つの呼吸法を解説します。
ポイントを押さえれば簡単です。安全かつ効率的に筋トレ効果を高める、今日から実践できる呼吸テクニックを紹介します。
もくじ

筋トレの呼吸法に「これが絶対正しい」という一つの答えはありません。
なぜなら、呼吸には「酸素を取り込む」役割と、「お腹に力を入れて体を安定させる」役割の、相反する2つの目的があるからです。
たとえば、軽いダンベル体操なら酸素をしっかり取り込む呼吸が大事。でも、重いバーベルを担ぐスクワットでは、息を固めて(お腹に力を入れて)腰を守る安定性が最優先されます。
つまり、呼吸法は「何をしたいか」で変える必要があるのです。
まずは、呼吸が持つ2つの大切な役割について解説します。
呼吸の役割は、大きく分けて以下の2つがあります。
「代謝」とは、酸素を体に取り込み、血圧を安定させること。これは主に軽〜中程度のトレーニングで重要になります。
一方で「安定性」とは、息をこらえてお腹(腹腔内圧)を高め、体幹をガチガチに固めること。重いものを持つ時に、腰を痛めず効率よく力を伝えるために必要です。
この2つのどちらを優先するかが、呼吸法を選ぶカギとなります。
結局、最適な呼吸法は3つの要素で決まります。
初心者が軽い負荷で行うなら安全な呼吸法。上級者が最大重量に挑戦するなら体を固める呼吸法。高血圧の人が行うなら、絶対に血圧を上げない呼吸法が選ばれるべきでしょう。
自分の今の状況に合わせて、呼吸法を賢く使い分けることが重要です。
次の章では、具体的な3つの呼吸戦略を見ていきましょう。

目的に合わせて使い分けるべき、主要な呼吸戦略は以下の3つです。
それぞれにメリットと適した場面があります。
研究によると、これらは負荷のレベル(1RMの何%か)によって使い分けが推奨されています。1RMとは「1回ギリギリ上げられる最大の重さ」のこと。
まずは基本となる「リズミカル呼吸」から見ていきましょう。
初心者の方や、筋肥大目的の一般的なトレーニング(8〜12回目安)には「リズミカル呼吸」が基本です。
これは「力を入れる時に息を吐き、戻す時に息を吸う」という、最も安全な呼吸法。
たとえばベンチプレスなら、バーベルを胸に下ろす時(筋肉が伸びる時)に息を吸い、押し上げる時(筋肉が縮む時)に息を吐きます。これにより、血圧の急上昇を防ぎ、安全にトレーニングできます。
まずはこの呼吸法をマスターして、フォームを固めることが大切です。
少し重い負荷(6〜10回程度)で筋力アップを目指す中級者には、「強制呼気」が最も実用的です。
これは、息を完全に止めず、すぼめた口から「フゥーッ!」と強く息を吐き出しながら力を入れるテクニック。
研究によれば、この方法は次に紹介する「バルサルバ法(息止め)」とほぼ同等の筋力を発揮しつつ、血圧上昇のリスクは低いことが示されています。
安全性とパワーを両立できる、非常にバランスの取れた呼吸法と言えるでしょう。
最大筋力(1〜5回)に挑戦する上級者だけが使うべきなのが「バルサルバ法」です。
これは動作の前に息を深く吸い込み、息を止めてお腹に力を込めたまま(ブレーシング)、動作を行う方法。
息を止めることでお腹の中の圧力(腹腔内圧)が最大になり、体幹が強力に固定されます。これにより、脊柱(背骨)を守りつつ、最大の力を発揮できるのです。
ただし、これは非常に強力な反面、深刻なリスクも伴うため、次の章で詳しく解説します。

バルサルバ法(息止め)は、非常に強力ですが、大きなリスクも伴います。
息を止めることで、体幹は安定しますが、同時に血圧や眼圧(眼球の圧力)が急激に上昇するためです。
これを安易に行うと、めまいや失神、最悪の場合は脳出血などのリスクもゼロではありません。
特に注意が必要な2つのリスクを理解しておきましょう。
バルサルバ法は、血圧にジェットコースターのような乱高下を引き起こします。
息をこらえている時と、解放した直後に血圧が急上昇・急降下するのです。
過去にはレッグプレス中に血圧が300mmHgを超えたという報告もあるほど。息を解放した瞬間に血圧が下がりすぎて、めまいや失神を起こす可能性もあります。
高血圧や心臓に不安がある方は、この呼吸法は絶対に避けるべきです。
最新の研究では、バルサルバ法が眼圧(IOP)を急上昇させることも分かってきました。
胸の圧力が上がると、眼の中の圧力も高まってしまうのです。眼圧が高い状態が続くのは、緑内障の主要なリスク。
興味深いことに、負荷が80% 1RM(ギリギリ8回できるかどうかの重さ)を超えると、眼圧への悪影響が出始めると報告されています。
緑内障のリスクがある方や、眼圧が気になる方は、高重量トレーニング自体を避けるか、呼吸法に細心の注意が必要です。

最近では、トレーニング「中」の呼吸法だけでなく、「呼吸筋」そのものを鍛える方法も注目されています。
呼吸筋トレーニング(RMT)と呼ばれるもので、これを行うと高回数のセットでバテにくくなる可能性があります。
なぜなら、激しい運動中は呼吸筋(横隔膜など)も疲労するからです。呼吸筋が疲れると、体は呼吸を優先し、手足の筋肉への酸素供給を減らしてしまいます。
呼吸筋を鍛えて疲れにくくすれば、手足の筋肉にしっかり酸素が届き、パフォーマンスが向上するというわけです。
呼吸筋を鍛えると、高回数のセット後半での「粘り」が変わってきます。
これは「呼吸性メタボリフレックス」という体の反射を弱めることができるからです。
この反射は、呼吸が苦しくなると、手足の血管を締めて、血液(酸素)を呼吸筋に優先的に送る仕組み。RMTで呼吸筋が強くなれば、この反射が起こりにくくなり、運動している筋肉への酸素供給が維持されます。
結果として、持久力が向上し、より多くのレップス(回数)をこなせるようになるのです。

呼吸筋は、専用の器具を使わなくても、寝ながら行う簡単なドリルで鍛えることができます。
特に重要なのは「横隔膜」を正しく使えるようにすることです。
ここでは、横隔膜を意識して動かすための3ステップドリルを紹介します。すべて仰向けで膝を立てた状態から始めましょう。
まずは、呼吸によって胸とお腹が連動して動く感覚を掴みます。
息を吐いた時にお腹全体がしぼむ感覚があればOKです。
次に、息を吐く時にしっかりと肋骨が下がる(閉じる)感覚を掴みます。
息を吐き切った時に、胸とお腹の境目がわからなくなる「ずん胴」のような状態になるのが理想です。
最後に、肋骨を下げた状態をキープしたまま、横隔膜を使ってお腹を膨らませる練習です。
このドリルを続けることで、呼吸筋、特に横隔膜を自在にコントロールできるようになり、トレーニング中の体幹の安定や持久力向上に繋がります。
筋トレの呼吸法について解説しました。 目的に合わせて、3つの呼吸法を使い分けましょう。
この記事で紹介した呼吸法を実践すれば、あなたは今よりも安全に、そして効率的に筋トレの効果を引き出すことができます。
なんとなく息を止めていたトレーニングは今日で終わりにしましょう。 自分のレベルと目的に合った呼吸法を取り入れ、怪我のリスクを最小限に抑えながら、最大の成果を手に入れてください。
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