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体幹トレーニング、頑張っているのに効果が出ない…その原因、実は「呼吸法」にあるかもしれません。腹筋を固めるだけのトレーニングでは、腰を痛めたりパフォーマンスが伸び悩んだりすることも。
この記事では、体幹機能を劇的に向上させる2つの呼吸法「ドローイン」と「ブレーシング」を科学的根拠に基づき徹底解説。最新の運動科学に基づいた正しい方法を学ぶことで、あなたのトレーニングは驚くほど効果的になります。今日から実践できる簡単なステップで、本物の強い体幹を手に入れましょう。
もくじ
「体幹を鍛えましょう」とよく言われますが、あなたは体幹が体のどの部分で、どんな働きをするか正しく理解していますか?
実は、体幹の安定性には「呼吸」が深く関わっています。まずは、その仕組みから見ていきましょう。
体幹とは、単にお腹周りの筋肉(アウターマッスル)だけを指すのではありません。
現代の考え方では、体幹は内側から体を支える圧力容器のようなものと定義されています。
これらの深層筋(インナーマッスル)が連携して収縮することで、お腹の内部の圧力、すなわち「腹腔内圧」が高まります。この圧力が高まると、体の中から背骨を支える強力な支柱となり、体が安定するのです。
この圧力システムの中で、特に重要なのが呼吸の主役である「横隔膜(おうかくまく)」です。
横隔膜は息を吸うときに収縮して下がり、お腹の空間を上から圧縮します。この動きが、腹腔内圧を高めるための主要なエンジンとなるのです。
つまり、呼吸のやり方次第で、体幹の安定性は大きく変わるということ。
今回ご紹介する「ドローイン」と「ブレーシング」は、この体幹という圧力容器をコントロールするための、根本的に異なる2つの呼吸戦略なのです。
次の章では、まず基本となる「ドローイン」について詳しく解説します。
ドローインは、体幹トレーニングの基本として広く知られている呼吸法です。しかし、その本当の目的を理解している人は少ないかもしれません。
ドローインの結論から言うと、その目的は「眠っている深層筋(インナーマッスル)を目覚めさせること」です。
慢性的な腰痛を抱える人は、腕や脚を動かす際に働くべきインナーマッスル、特に「天然のコルセット」と呼ばれる腹横筋の反応が遅れていることが研究でわかっています。
ドローインは、この腹横筋を意識的に収縮させる練習です。脳と筋肉の神経的なつながりを再確立し、「正しいタイミングで働けるようにする」ためのリハビリテーション手法なのです。
重いものを持ち上げるためではなく、まずは筋肉の使い方を体に思い出させることが重要となります。
ドローインは正しい感覚を掴むことが大切です。まずは仰向けで練習してみましょう。
【よくある間違い】
仰向けで感覚を掴めたら、座った姿勢や立った姿勢でも実践し、日常生活に活かしていくのが理想です。
ドローインは、腹横筋などを選択的に活性化させるため、腰痛の改善や姿勢維持に非常に効果的であることが多くの研究で示されています。
しかし、ドローインは万能ではありません。最大の限界は、高い腹腔内圧を生み出せないことです。お腹を凹ませる動きは、強い力を発揮するための体の自然なメカニズムとは異なります。
スクワットなどの高負荷トレーニングやスポーツの場面では、ドローインは不向きであり、パフォーマンスを逆に下げてしまう可能性すらあるのです。
では、高負荷の状況ではどのような呼吸法が必要なのでしょうか?それが次にご紹介する「ブレーシング」です。
ドローインが深層筋の「目覚め」を促す繊細なアプローチなら、ブレーシングは体幹を「鎧化」する、より強力で実践的な戦略です。
ブレーシングの目的は、「体幹全体の筋肉を同時に収縮させ、剛性(硬さ)を最大化すること」です。
お腹にパンチを受ける寸前に、グッと身構える状態を想像してみてください。このとき、お腹は凹ませるのではなく、むしろ全方向に張り出して固まりますよね。これがブレーシングです。
腹横筋だけでなく、腹直筋や腹斜筋といったアウターマッスルも総動員して腹腔内圧を劇的に高め、背骨をガッチリと固定します。
この高い剛性は、
など、高いパフォーマンスが求められる場面で不可欠な技術なのです。
ブレーシングは単なる力みではありません。横隔膜とお腹周りの筋肉を協調させる練習が必要です。
最終的な目標は、お腹を固めた(ブレーシングした)状態で、浅い呼吸や会話ができるようになることです。これにより、動作中も体幹の安定を維持し続けられます。
研究データは、ブレーシングの有効性を示しています。
ドローインと比較してはるかに高い腹腔内圧を生み出すことができ、これが体幹の安定性を直接的に向上させます。
また、お腹周りの全ての筋肉を活動させるため、体幹部や股関節の筋力向上に繋がることも示唆されています。さらに、腰痛のリハビリ後期や再発予防においても、ブレーシングの指導を追加することで、痛みの軽減や機能改善に大きな効果があったという報告もあります。
次の章では、この2つをどう使い分ければよいのかを解説します。
ここまで読んで、「結局、自分はどっちをやればいいの?」と思った方も多いでしょう。
結論から言うと、どちらが優れているという話ではなく、目的によって使い分けることが最も重要です。
ドローインとブレーシングは、対立するものではなく、それぞれの役割を持った相互補完的な技術です。
多くの専門家は、まずドローインで眠っている筋肉を目覚めさせ、その感覚を掴んでから、より機能的なブレーシングへとステップアップしていく段階的な導入を推奨しています。
特徴 | ドローイン (Draw-in) | ブレーシング (Abdominal Bracing) |
基本動作 | 息を吐きながら腹部を凹ませる | 腹部全体を固め、膨らませる/張りを保つ |
主たる目的 | 深層筋の選択的活性化、運動制御の再学習 | 体幹全体の剛性最大化、脊柱の保護 |
活性化する筋肉 | 腹横筋などのインナーマッスルが中心 | 腹筋群全体の同時収縮 |
腹腔内圧 | 限定的 | 大幅に高まる |
最適な適用場面 | 腰痛リハビリ初期、姿勢改善 | 高重量トレーニング、スポーツ全般 |
注意点 | 呼吸を止めない、リラックスする | 脇腹を凹ませない、360°の張りを意識 |
あなたの目的はどちらに近いですか?次の章では、具体的なケース別に最適なアプローチをご紹介します。
最後に、ドローインとブレーシングを実際の生活やトレーニングでどのように活用すればよいか、3つのケーススタディを見ていきましょう。
今回は、体幹トレーニングの効果を最大化する2つの呼吸法、「ドローイン」と「ブレーシング」について解説しました。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。
正しい呼吸法を身につけることは、単に腹筋を鍛える以上の意味を持ちます。それは、あなたの体幹機能を根本から見直し、ケガを防ぎ、あらゆる動作の質を高めるための最も効果的な戦略です。
この記事を参考に、ぜひ今日からあなたのトレーニングに「正しい呼吸」を取り入れてみてください。呼吸を制する者は、体幹を制し、あなたの身体はもっと機能的に、もっと強くなれるはずです。
「呼吸法はわかったけど、一人で正しくできているか不安…」
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