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腹筋で猫背が悪化?正しい姿勢改善トレーニング3選

姿勢をよくしたいと思って続けている腹筋運動、実はあなたの猫背を悪化させているかもしれません。

猫背を治したくて腹筋を頑張っているのに、一向に姿勢が良くならない…そんなお悩み、ありませんか?この記事では、トレーニングのプロが、多くの人が勘違いしているポイントを徹底解説。猫背と腹筋の意外な関係と、本当に効果的な姿勢改善トレーニングがわかります。

今日から始められる簡単な方法で、憧れのまっすぐな姿勢を手に入れましょう。

腹筋のやりすぎは猫背を悪化させる

最初に結論からお伝えします。間違った方法で腹筋運動をやりすぎると、猫背は改善するどころか悪化する可能性があります。

「え、腹筋が弱いから猫背になるんじゃないの?」と思った方も多いかもしれません。もちろん、腹筋の筋力不足も猫背の一因です。しかし、やみくもに鍛えるだけでは逆効果になることを知っておく必要があります。

無意識のうちに悪化?猫背になる現代人の生活習慣

前に突き出た頭、丸まった両肩、そして猫のように丸まった背中…。

なぜこのような姿勢になってしまうのでしょうか。研究によれば、現代人は平均して1日に6〜8時間も座って過ごしていると言われています。そして問題は、座っている間、ほとんどの人が背中を丸めたいわゆる「悪い姿勢」になっていることです。

しかし、この猫背姿勢そのものが絶対的に悪いわけではありません。実は、体を丸めた方が作業に集中しやすいという研究結果もあるほどです。問題なのは、この丸まった姿勢のまま、毎日何時間も体が固まってしまうことにあります。

私たちの体は良くも悪くも、環境に「適応」する動物です。長時間同じ姿勢を続けていると、体はその姿勢に適応します。その結果、特定の筋肉(胸や肩の前側など)を縮こませて硬くし、反対に他の筋肉(背中やお尻など)を弱らせてしまうのです。

猫背の本当の原因は「筋肉のアンバランス」

猫背の根本的な原因は、体の「悪い適応」によって生まれる、お腹側と背中側の筋肉の「アンバランス」にあります。

胸の筋肉が縮こまって硬くなると、肩が内側に引っ張られます。そして、背中の筋肉が弱って伸びきってしまうと、肩甲骨を寄せて胸を張る力がなくなり、頭が前に出て背中が丸まってしまうのです。

このアンバランスを解消しない限り、いくら腹筋を鍛えても、美しい姿勢を手に入れることはできません

腹直筋だけを鍛えるのは逆効果

「腹筋」と聞いてイメージするのは、お腹の正面にある「腹直筋」、いわゆるシックスパックを作る筋肉ではないでしょうか。

実は、この腹直筋だけを一生懸命鍛えるのは、猫背改善には逆効果になることがあります。

なぜなら、腹直筋は背骨を「丸める」働きを持つ筋肉だからです。この筋肉ばかりを強化すると、体を前に引っ張る力がより強くなり、猫背をさらに助長してしまう可能性があるのです。

大切なのは、どの筋肉を、どのように鍛えるか。次の章で、猫背改善のための具体的な2ステップを見ていきましょう。

猫背改善の鍵は「緩める」と「鍛える」の2ステップ

猫背を根本から改善するためには、ただ鍛えるだけでは不十分です。縮こまってガチガチになった筋肉をまず「緩めて」あげて、そのあとに弱っている筋肉を正しく「鍛える」。この2つのステップが重要です。

ステップ1:ガチガチに固まった筋肉を「緩める」

まずは、長年の猫背姿勢で凝り固まった筋肉をストレッチで解放し、正しい姿勢を取りやすい状態を作りましょう。

①胸と肩を開く「タオル・バンザイストレッチ」

硬くなった胸と肩の筋肉を大きく開き、丸まった肩を正しい位置に戻しやすくします。

タオル・バンザイストレッチのやり方
  1. タオルやバンドの両端を、肩幅より少し広めに持ちます。
  2. 肘をまっすぐ伸ばしたまま、ゆっくりと腕を頭の上を通って背中側まで持っていきます。
  3. 背中側まで行ったら、今度は同じ軌道で前に戻します。これを繰り返します。

ポイントは、腰を反らさないようにお腹に軽く力を入れておくことです。痛みを感じる場合は無理せず、タオルの幅を広げて調整してください。

②背中の可動域を広げる「四つん這い・胸開き」

次に、動きが悪くなった背骨(特に胸椎)の柔軟性を取り戻し、背中を伸ばしやすくします。

四つん這い・胸開きやり方
  1. 肩の真下に手、股関節の真下に膝がくるように四つん這いになります。
  2. 左手を頭の後ろに添えます。
  3. 息を吐きながら、左肘を右腕の下に滑り込ませるように体をねじります。
  4. 次に息を吸いながら、今度は左肘を天井に向かって大きく開きます。目線も肘を追いかけましょう。
  5. この動きを10回ほど繰り返し、反対側も同様に行います。

ステップ2:弱った筋肉を「鍛える」

筋肉がほぐれて体が動きやすくなったら、次は姿勢を支えるために弱ってしまった筋肉を鍛える番です。

①姿勢を支える天然のコルセット「ドローイン」

お腹の深層にあるインナーマッスル「腹横筋」を鍛えます。この筋肉は天然のコルセットのようにお腹周りを安定させ、背骨を内側から支えてくれます。

ドローインやり方
  1. 仰向けに寝て、膝を90度に立てます。
  2. ゆっくりと息を吐きながら、おへそを背骨に近づけるイメージで、お腹を限界まで凹ませます。
  3. お腹を凹ませたまま、浅い呼吸を繰り返しながら30秒キープします。これを3セット行いましょう。

ちなみに、ドローインとブレーシングは異なるエクササイズです。詳しく知りたい方は、体幹とは?ドローインとブレーシング、2つの違いを解説も合わせてお読みください。

②丸まった背中を引っ張る「バックエクステンション」

弱って伸びきってしまった背中の筋肉(脊柱起立筋など)を強化し、背筋をまっすぐ伸ばす力を養います。

バックエクステンションのやり方
  1. うつ伏せになり、両手は頭の後ろか耳の横に添えます。
  2. ゆっくりと息を吐きながら、胸を反らせるように上半身を持ち上げます。
  3. 上がりきったところで2秒キープし、ゆっくりと元の姿勢に戻ります。
  4. この動作を10回×3セット行いましょう。腰を反らしすぎないのがポイントです。

③正しい姿勢を記憶させる「ヒップリフト」

座りっぱなしで弱りがちな、お尻の筋肉(臀筋)を鍛えます。お尻の筋肉は、骨盤を安定させ、正しい姿勢を保つために非常に重要な役割を果たします。

ヒップリフトのやり方
  1. 仰向けになり、膝を立てて足は腰幅に開きます。
  2. お尻にキュッと力を入れ、骨盤から持ち上げるように腰を浮かせます。肩から膝までが一直線になるのが目安です。
  3. トップの位置で5秒間キープし、ゆっくりと下ろします。
  4. この動作を10回×3セット行いましょう。腰を反らさず、お尻の力で上げることを意識してください。

【重要】エクササイズだけでは不十分!日常で意識すべきこと

今回ご紹介したエクササイズは、継続すれば驚くほどの効果を発揮します。しかし、より根本的に姿勢を改善し、快適な毎日を送るためには、エクササイズ以外の時間も重要です。

せっかくエクササイズで体を整えても、その後すぐにデスクに戻って何時間も座りっぱなしでは、体はまた元の悪い状態に戻ろうとしてしまいます。

大切なのは、もっと動くことを意識すること。

30分に一度は立ち上がって軽く伸びをする、エレベーターではなく階段を使う、一駅手前で降りて歩くなど、日常生活の中にこまめに動きを取り入れましょう。

実は、ウェイトトレーニングのような筋トレも、ストレッチと同じくらい体の柔軟性を高める効果があるという研究結果もあります。

体を動かす習慣こそが、美しい姿勢を永続させるための最良の方法なのです。

まとめ

今回は、猫背と腹筋の正しい関係、そして美しい姿勢を作るための具体的なステップについて解説しました。この記事のポイントを最後におさらいしましょう。

  • 猫背の原因は長時間の同じ姿勢
    体が悪い姿勢に「適応」し、筋肉のアンバランスが生まれることが根本原因。
  • 腹直筋だけの筋トレは逆効果
    体を丸める筋肉だけを鍛えると、猫背を助長する可能性がある。
  • 改善は「緩める→鍛える」の2ステップ
    まずストレッチで固まった筋肉を緩め、その後に弱ったインナーマッスルや背中、お尻の筋肉を鍛えることが重要。
  • 効果的なエクササイズ
    胸や背中を緩めるストレッチに加え、ドローイン、バックエクステンション、ヒップリフトなどで必要な筋肉を鍛える。
  • 日常生活も大切
    エクササイズだけでなく、こまめに動く習慣をつけることで、改善効果が持続する。

今回ご紹介したトレーニングと意識を継続することで、体の軸がしっかりと安定し、意識しなくても自然と美しい姿勢を保てるようになるでしょう。正しい知識で、猫背の悩みから解放されましょう。