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筋トレで関節痛になるNG行動5選と改善策|トレーナー解説

筋トレ後の関節痛、年のせいだと諦めていませんか?実はそれ、多くの人がやりがちなNG行動が原因かもしれません。

がんばっているのに体が痛むと、モチベーションも下がりますよね。この記事では運動科学に基づき、関節痛を引き起こす5つの間違いと、誰でも今日からできる改善策を解説。

難しい知識は不要です。簡単な調整だけで、痛みなく効果的なトレーニングを続けられるようになりますよ。

筋トレで関節痛になる理由1:骨格に合っていないフォームで無理している

筋トレで関節を痛める最大の原因の一つは、あなたの骨格に合っていないフォームで無理やりトレーニングを続けてしまうことです。

なぜなら、人によって腕や脚の長さ、関節の可動域は全く違うからです。つまり、YouTubeやSNSで見かけるインフルエンサーの「正しいフォーム」が、あなたにとっても正しいとは限りません。

自分の体に合わないフォームは、関節に不必要なストレスをかけ、痛みを引き起こすのです。

スクワットは足幅とつま先の向きで変わる

例えばスクワット。太ももの骨が長い人が、無理に上半身を直立させようとすると、バランスを崩して腰に大きな負担がかかります。

また、股関節の形によっては、足を閉じてつま先を前に向けるスタンスだと、深くしゃがめずに関節が詰まるような感覚(ピンチング)が起こることも。これは痛みの危険信号です。

無理に人の真似をするのではなく、自分に合ったフォームを見つけることが重要です。

デッドリフトは腕の長さが重要

デッドリフトも同様です。腕が短い人が、腕の長い人と同じように床からバーベルを引き上げようとすると、どうしても背中が丸まりやすくなります。

背中が丸まった状態で重いものを持ち上げるのは、腰を痛める典型的なパターン。これも怪我に直結する非常に危険な間違いです。

自分の体の特徴を無視してトレーニングをすると、筋肉がつく前に体を壊してしまうかもしれません。

今すぐできる簡単なフォーム調整法

自分の骨格をレントゲンで見る必要はありません。簡単な調整を試すだけでOKです。

  • スクワットの調整
    • かかとの下に薄いプレートを敷いてみる
    • 足幅を肩幅より広く、つま先を外側に向けてみる
  • デッドリフトの調整
    • バーベルを少し高い位置からスタートする(ラックアップ)
    • 足幅を広くするスモウデッドリフトを試してみる

これらの小さな工夫で、関節への負担が劇的に減ることがあります。まずは自分にとって一番しっくりくるフォームを探してみてください。

フォームを整えてもまだ肩が痛い…そんなあなたは、次に紹介する「ある筋肉」が眠っているのかもしれません。

筋トレで関節痛になる理由2:背中の筋肉を使えていない

肩の痛みに悩んでいるなら、原因は肩そのものではなく「背中の筋肉」が正しく使えていないことかもしれません。

よく肩の痛みはローテーターカフ(肩のインナーマッスル)の弱さが原因だと言われますが、それだけではないのです。肩甲骨を支える僧帽筋や菱形筋といった背中の大きな筋肉が、実は肩の安定性に大きく関わっています。

これらの筋肉が弱いと、プレスやプル系の動作のたびに肩関節がグラつき、不安定な状態が続いて痛みの原因になるのです。

肩の痛みは「肩甲骨」の動きがカギ

特にデスクワークが多い人は、肩が前に出て猫背になりがち。この姿勢では背中の筋肉が常に引き伸ばされ「眠っている」状態になってしまいます。

この状態でロウイング(引く動作)を行っても、腕の力ばかり使ってしまい、肝心の背中の筋肉はほとんど働いていません。これでは背中は成長せず、肩への負担ばかりが増えてしまいます。

肩の痛みをなくし、たくましい背中を作るには、まずこの眠った背中の筋肉を目覚めさせることが不可欠です。

今日からできる!背中の筋肉を目覚めさせる2つのコツ

難しいことはありません。2つの意識を持つだけで、背中の使い方は劇的に変わります。

  • 引く動作(ロウイング系)
    肩をすくめず、まず肩を下に落とす意識を持ちましょう。そこから「肘で引く」ようにして、最後に肩甲骨をぎゅっと寄せてください。
  • 上から引く動作(ラットプルダウンなど)
    腕を上げるときは、肩も一緒にリラックスして持ち上げます。下ろすときは、「肘で引きながら肩を耳から遠ざける」ようにグッと下ろしましょう。

最初は軽い重量で構いません。この意識でトレーニングを行うことで、肩の安定性が増し、痛みのリスクを大幅に減らせるでしょう。

背中を正しく使えるようになったら、次はトレーニング種目の選び方を見直してみましょう。実は、あなたが良かれと思ってやっている種目が、肘や手首の痛みを引き起こしているかもしれません。

筋トレで関節痛になる理由3:両手が固定される種目ばかりやっている

バーベルカールやストレートバーでのケーブルプッシュダウンなど、両手が固定された器具でのトレーニングばかり行っていませんか?実はこれが、肘や手首の痛みの原因になっている可能性があります。

多くの人は気づいていませんが、人間の腕はまっすぐではありません。リラックスした状態で腕を伸ばすと、肘が少し外側を向く「キャリングアングル」という自然な角度がついています。

しかし、まっすぐなバーを握ると、この自然な角度が無視され、手首や肘の関節に不自然な力がかかってしまうのです。

「キャリングアングル」が肘や手首の痛みの原因

特に女性は、このキャリングアングルが男性より大きい傾向にあります。

まっすぐなバーを握ることで、関節や腱、靭帯は本来とは違う不自然なラインに強制されます。これを何千回と繰り返すことで、ストレスが蓄積し、やがて痛みとして現れるのです。

もちろん、バーベル種目がすべて悪いわけではありません。しかし、そればかりに頼るのは危険です。

痛み回避のカギは「自由な動き」ができる種目

この問題を解決する方法はシンプルです。各筋肉部位のトレーニングに、少なくとも1つは「腕が自由に動かせる種目」を取り入れましょう。

  • 胸・肩
    ダンベルプレス
  • 背中
    ワンハンド(片手)のケーブルロウ

  • ダンベルカール、クロスボディ・ケーブルプッシュダウン

ダンベルやケーブルを使えば、手首や肘が最も自然で快適な角度で動くことができます。これにより、関節への無用なストレスを避け、痛みのリスクを減らすことが可能です。

種目選びの次は、トレーニングの「進め方」です。がむしゃらに重さを追い求めるその姿勢が、関節の寿命を縮めているかもしれませんよ。

筋トレで関節痛になる理由4:重量を増やすことだけを考えている

「筋肉を成長させるには、毎回重量を上げなければならない」そう信じて、無理をしていませんか?その考え方が、関節を痛める原因になります。

筋肉の成長は、重さを無理やり増やすことで起こるのではありません。適切な刺激を与え、しっかり回復することで、結果として筋肉が強くなるのです。それは「強制」するものではなく「獲得」するものです。

フォームを崩してまで重い重量を扱うのは、筋肉への刺激よりも関節へのダメージが上回ってしまいます。

成長は「強制」するのではなく「獲得」するもの

特に、睡眠不足や栄養不足でコンディションが悪い日に無理をすると、怪我のリスクは一気に高まります。

疲れた状態でジムへ行き、ウォーミングアップもそこそこに高重量の筋トレをすれば、関節を痛めるのは当然です。

その日のコンディションで「今日は無理だ」と感じたら、勇気を持って重量を上げない選択をしてください。

重量以外で筋肉を成長するための2つの方法

そもそも、筋肉を成長させる方法は重量アップだけではありません。ある研究では、同じ重量で「回数を増やす」グループと、回数は同じで「重量を増やす」グループを比較したところ、筋肥大の効果は同等だったと報告されています。

もし体が重さに対応できないと感じたら、以下の方法を試してみてください。

  1. 回数(レップ数)を1〜2回多くやってみる
  2. 前回と同じ重量・回数を、より綺麗なフォームで、より楽にこなす

これらも立派な「プログレッシブ・オーバーロード(漸進性過負荷)」です。あせらず着実に成長することが、関節を守りながら体を強くする秘訣です。

最後に、最も重要でありながら、多くの人が見過ごしている間違いについてお話しします。それは、あなたの体が発する「サイン」に関することです。

筋トレで関節痛になる理由5:体の「小さな悲鳴」を無視している

トレーニング中に感じる「ちょっとした違和感」や「軽い痛み」。これを「気合が足りないからだ」と無視し続けることが、最も危険な間違いです。

体が出す小さなサインは「このまま続けると危ないよ」という警告です。それを無視して無理を続けると、小さな歪みがどんどん蓄積し、ある日突然、大きな怪我としてあなたの健康的な生活を奪うことになります。

小さな違和感が大きな怪我につながる

「この種目、なんだか肘が気持ち悪いな…」と感じたら、「根性で乗り切れ!」と自分に言い聞かせるのはやめましょう。

それはあなたの体が発している正直なフィードバックです。その声に耳を傾け、対処することが、長く健康にトレーニングを続けるための最も重要なスキルと言えるでしょう。

関節を休ませるための簡単な工夫

痛みや違和感を感じたら、次のような工夫をしてみてください。

  • 重量を落として高回数で行う
  • 別の種目に切り替える
  • 8〜12週間ごとに、一部の種目を入れ替える

同じ動作を繰り返すこと自体が関節へのストレスになります。定期的に種目を入れ替えて関節を休ませることで、小さな不調が慢性的な痛みに発展するのを防げます。

あなたの体は一生ものです。体の声を聞き、賢くトレーニングと付き合っていきましょう。

まとめ

筋トレ後の関節痛に悩む必要はもうありません。今回ご紹介した5つのポイントを見直すだけで、あなたのトレーニングはより安全で効果的なものに変わります。

最後に、重要なポイントをまとめました。

  • 骨格に合ったフォーム:人の真似ではなく、自分が一番しっくりくるフォームを見つける
  • 背中の意識:肩甲骨を正しく動かし、肩の土台を安定させる
  • 自由な動きの種目:ダンベルやケーブルを取り入れ、関節への負担を減らす
  • 賢い重量設定:重量だけでなく、回数やフォームの改善でも成長を目指す
  • 体の声を聞く:小さな違和感を無視せず、種目変更や休息をためらわない

これらのことを実践すれば、「歳のせい」と諦めることなく、生涯にわたってトレーニングを楽しめる体を手に入れることができます。怪我のリスクを最小限に抑え、理想の体を目指していきましょう。